オウンドメディアの8つのタイプ。始める前に、既存メディアを研究してみよう!
オウンドメディアには、いくつかの代表的な型があります。それぞれを知って、自社ではどのようなオウンドメディアが作れそうかを考えるヒントにしてください
マーケティング型オウンドメディアの代表的タイプ分類とは?
ひとくちにオウンドメディアと言われますが、大きくは以下の2つに分けられます。
1、コンバージョン獲得型
商品の購入促進やサービスへの問い合わせ獲得といった直接的な成果(コンバージョン)を目的とする、コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングの一環としてのオウンドメディア。新規見込み顧客の初期獲得やナーチャリング(育成)、既存顧客との関係強化などを役割とします。
2、独立事業型
自社の事業や、商品やサービスへの貢献よりも、独立したメディアとして成り立たせること自体を目的としたオウンドメディア。PVを伸ばし、外部とのコンテンツ提携や広告掲載で収益を生み出すといった、メディア運営自体を事業とするタイプです。
ここでは、インバウンドマーケティングの観点から、1のコンバージョン獲得型でのオウンドメディアに絞って、その代表的なタイプをピックアップして行きます。なお今回、それぞれのタイプごとに事例となるオウンドメディアを紹介していますが、そのピックアップは次の前提で行いました。
ピックアップ基準
- メジャー企業のオウンドメディアではなく、中小事業者の参考になりやすい実践的なもの
- ドメインが自社サイトと同じか異なるかは問わない
- 一定以上の比重があれば、自社サイト内のコンテンツもオウンドメディアとみなす
タイプ1.専門知識型オウンドメディア
自社の商品やサービスに関係する、汎用的な情報を提供するタイプ
自社の商品やサービス、事業に関連して、対象者に役立つ汎用的な情報を発信。直接的に商品やサービスをアピールするのではなく、自社が持っている専門知識や有益な情報を公開することで、その情報を探している人に見つけてもらおうとするような作り方のメディアです。オウンドメディアを分類していけば、このタイプに該当するものが比較的多いかもしれません。
●専門型メディア例
サイト名:スモビバ!
URL: http://www.sumoviva.jp/
提供企業:弥生株式会社
主な事業:ソフトウェア、サービスの提供
会計サービスやソフトの提供という事業分野に関連して、税務知識や制度変更などの情報を提供するオウンドメディアです。この「スモビバ!」が優れているのは、ターゲットとして個人事業主、中小企業、起業家といったスモールビジネスを明確に設定し、そこに向けての情報を発信しているところ。対象者に役立つ情報がここに来れば一式揃っている、という位置づけになっています。
今ならマイナンバー制度や確定申告など、その時期に応じた情報が更新されています。事業分類としてはBtoBですが、小規模事業の経営者向けということもあり、レスポンシブにしてスマホでも見やすく作られています。
想定されるKPI
- ナビゲーションや各記事には、自社商品やサービスの紹介ページへの導線を上手く設定
- その遷移数や、“いいね”数などがKPIに設定されていると推測される
タイプ2.自社PR型オウンドメディア
自社商品やサービスの内容、魅力に関する情報を提供するタイプ
オウンドメディア運営で悩ましいことのひとつに、自社の商品やサービスについてどの程度盛り込んでいくかということがあります。PR色が出すぎると販促物になってしまいますし、かといって記事広告のようになってしまうなら第三者メディアに出した方が効果的。しかし、内容を工夫すれば、自社の商品やサービスを通した情報発信を行うようなメディア作りも可能です。
●自己PR型メディア例
サイト名:MELLOW
URL: http://wine-mellow.com/media/
提供企業:株式会社湘南貿易
主な事業:ノンアルコールワインの提供
自社商品PR路線で、ひとつのヒントを与えてくれるサイトがこの「MELLOW」です。一見するとノンアルコールワインに関する汎用的な情報を提供しているように見えますが、読んでいくとそれぞれが自社の商品にかなり比重を置いた記事になっています。しかも、記事毎に商品が大きめに複数掲載されていますが、あまり違和感がないのはページの雰囲気によく馴染ませているからでしょう。
また更新に関して、このサイトでは更新回数よりもPRとうまく連携させることを重視している様子。更新に応じたリリースなども配信しているようです。こうした取り組みも参考にしたいポイントです。
想定されるKPI
- 各オンラインショップへの誘導数
- 実際の購入までをKPIにしている可能性も考えられる
タイプ3.提案型オウンドメディア
ニッチ、あるいはこれまでにないような分野の情報を提供するタイプ
あまり一般的でない商品やサービスなど、新たに認知や理解を広げていきたい提案性の高い分野については、「それが何であるか」から伝えていかなければなりません。そんな場合、以前は第三者メディアに取り上げてもらうのが主要な方法でしたが、今はオウンドメディアで自ら情報を出すことが可能です。ここはオウンドメディアの大きな可能性がある分野だと言えます。
●提案型メディア例
サイト名:未来住まい方会議
URL: http://yadokari.net/
提供企業:YADOKARI株式会社
主な事業:スモールハウスプロデュース・施工・管理支援
この「未来住まい方会議」では、ミニマルライフや多拠点住居という、これまでにない住まい方を提案しています。暮らし方の選択肢を増やすという「住」の視点から新たな豊かさを定義。そのための情報を発信しながら、スモールハウスという耳慣れないジャンルの建築・設計を紹介しています。
想定されるKPI
- 記事内にコンバージョンにつながる目立った導線は設けられていないが、「お仕事の依頼」というカテゴリーでコンタクトを受け付け
- 不動産物件紹介などで、ゆくゆくはメディアとしてのマネタイズも視野に入れている可能性あり
タイプ4.サポート型オウンドメディア
顧客に対するサポート情報を提供するタイプ
大手メーカーなどでは以前から、WEB上で手厚く購入者サポートを行っていますが、オウンドメディアの運営としてそれに取り組むというやり方もあります。
●サポート型メディア事例
サイト名:安心計画×サポートサイト
URL: http://anshin-support.jp/
提供企業:安心計画株式会社
主な事業:住宅関連支援
「安心計画×サポートサイト」では、ユーザーサポートのサイトを独立させ、顧客への質の高い情報を提供。製品別に、よくある質問(サポートセンターへの問い合わせ事例)や、マニュアル、スキルアップスクール、関連データのダウンロードなどが行えるようになっています。
製品購入者向けのサイトですが、完全ログイン制にはせず多くの情報をオープンにすることで、新規客へのアピールにも役立つようにしています。また、イベント情報のカテゴリーも設置し、自社のニュースも掲載することで、メディアとしての広がりを出しています。マホ専用サイトも設けてあり、力の入れ具合が伝わって来ます。
想定されるKPI
- 会員登録者数や、それぞれのサポートメニューの利用者数の推移など
- 会員化されているため、ユーザーアンケートなどによる顧客満足度調査など可能
タイプ5.オピニオン(コラム)型オウンドメディア
自らの意見、意思を発信するタイプ
オウンドメディアの元祖と言えば、一時多かった社長ブログなどのブログ。以前に比べて選択されることは少なくなったものの、業種や業界によっては今でも効果的です。特に医療関係や治療院、士業などで多く、また内容的にも信頼感が高く良いものがあります。個人が自らの意見や意思を主張することが集客へと結びつきやすい分野では、これからも有効な方法だと言えるでしょう。
●オピニオン型メディア事例
サイト名:Skywalker院長のブログ
URL: http://ameblo.jp/tadashikjp/
提供企業:北浜子どもクリニック
主な事業:小児科
この「Skywalker院長のブログ」はアメブロ上で公開されている典型的な「ブログ」です。見た目はやや素人っぽい感じもしますが、コンテンツファーストの思想が体現されています。継続性、専門性、そして親しみやすさなど、様々な面で参考になる事例です。ブログは、飾らない自分自身がそのまま出るメディアだけに、提供できる記事の質や更新を続けていけるかなど、事前によく考えて始めることが大切です。
タイプ6.ユーザー参加(コミュニティ)型
ユーザーがコンテンツを提供、意見交換の場を提供するタイプ
コンテンツをユーザーから提供してもらう方法は、以前から「CGM」という言葉でよく知られて来ました。オウンドメディア運営でよくある悩みの一つが「どうやってコンテンツを増やしていくか」ということですが、ユーザー参加型にすれば、そんな悩みも解消できます。
●ユーザー参加型メディア事例
サイト名:和酒らぼ
URL: http://washulabo.gekkeikan.co.jp/
提供企業:月桂冠株式会社
主な事業:酒類製造販売
1637年創業の老舗酒蔵、月桂冠が運営する「和酒らぼ」は、お酒が好きな人のためのメディア。商品情報や楽しみ方、おつまみレシピなどの情報を提供しています。
会員登録ができるしくみになっており、参加型の企画を展開。アンケート・キャンペーン、投票キャンペーンなど参加生の高い企画を頻繁に行っています。スタッフが書いているブログは、コメントを受け付けて、双方向に。掲示板でも、スタッフが設定した公式テーマ以外に、会員も自由にテーマをつくれるようになっており、日本酒好き同士の交流を生み出すことに成功しています。
「情報発信」にとどまりがちなオウンドメディア運用の中で、参考になるポイントの多いメディア。会員限定のリアルイベントの展開なども試みられているようですので、「会員=コアな日本酒ファン」の資産価値は大きそうです。
想定されるKPI
- 会員制にすることで会員登録数やアクティブ率、キャンペーンへの応募(コメント)数などを指標にできる
タイプ7.EC(短期)型オウンドメディア
すぐに購入や申込みを行いやすい商品に、適切な情報と導線が置かれているタイプ
ECサイトも、ただカタログ的に商品を並べるのではなくメディア化していく傾向にあります。そのひとつのタイプが、詳しい情報でユーザーを惹きつけ、説得し、そのまま商品購入につながる動機付けを行うというオウンドメディア的な作り方です。
●EC(短期)型メディア事例
サイト名:ピュア☆ラ☆バリ
URL: http://pure-la.net/
提供企業:PT.Jepun Floral BALI
主な事業:酒雑貨販売
バリ雑貨の通販!「ピュア☆ラ☆バリ」では、ひとつひとつの商品に対する説明が充実しており、各商品ページがカタログの範疇を超えた存在となっています。雑貨など、価格も手頃ですぐに購入に結びつくような商品には、このようなやり方は効果的だと言えるでしょう。 スマホ対応にはまだ着手できていないようですが、これらのコンテンツ資産をスマホでも生かして行けば一層成功の可能性があるサイトです。
想定されるKPI
- コンテンツ閲覧者に占める購入率
タイプ8.EC(育成)型
情報提供しながら徐々にECでの購入への関心を高めるタイプ
メディア化したECサイトのもう一つのタイプは、適切な情報を提供し、ユーザーを育成しながら購入に結びつけていくものです。EC(短期)型では、一つ一つの商品の説明を充実させ“点”でユーザーを惹き付けますが、育成型の場合はサイト全体の“流れ”からも、興味を呼び起こす必要があります。つまり、シナリオが非常に重要になって来ます。
●EC(育成)型メディア事例
サイト名:小島屋
URL: http://www.kojima-ya.com/
提供企業:小島屋
主な事業:ドライフルーツ、ナッツ販売
この小島屋のサイトは、おつまみやおやつとして、最初の選択肢に入りにくいドライフルーツの魅力について紹介しながら、購入へと結びつけていくという流れが上手く作られた事例です。最初は商品説明でなく、おつまみ、美容、健康などのシーン別の訴求を行っています。そこから個々の商品への興味、そして購入までの流れがどうつくられているかを見ていくのは、参考になります。
想定されるKPI
- 購入数、購入額など
- ユーザーの遷移や何度目の訪問で購入に結びついているかなどの行動
他社メディアの分析&チェックポイント
オウンドメディアを始める時には、他社のメディアをいろいろ見てリサーチすると思いますが、その時に、次のような視点で分析、想像しながら見ていくとヒントが得られやすくなります。
オウンドメディア研究のチェックポイント
- どういったペルソナが設定されているか?
- どんなシナリオでコンバージョンまで導いているか?
- (コンバージョンへの)態度変容はどこで行われるようになっているか?
- (メディアとしての)個性や特徴は何か?
- 情報の質は?
- 更新頻度や更新の仕方の特徴は?
- 情報の分類や整理のされ方は?
- CTAの設置の工夫は?
- 想定される効果測定指標は?
- デザイン上の特徴は?
項目ごとのチェックリストなどをつくって書き込んでいくようにすると、意外な発見が得られることもありますので、ぜひ試してみてください。
対象者の視点で考えてみることが重要:
また、ある程度企画の方向性が決まったら、ターゲット層の関心事を想定し、競合と思われるメディアをチェックしてみましょう。コンテンツによって見込み客の潜在ニーズを引き出すコンテンツマーケティングでは、対象者の関心事が基軸になります。同じ業界だけで競合分析をすると、本当の競合メディアを見逃してしまいかねません。
例えば、アンチエイジング化粧品を扱う会社がオウンドメディアを考える場合、対象者の「年齢を経ても、いつまでも若々しくありたい」というニーズから考えていけば、スポーツジム、健康食品やサプリメント、ファッション、ウイッグメーカーなど、様々な業種が同じ対象者向けにメディア展開している可能性があります。対象者の関心事から、競合分析を行ってみてください。
今回のまとめ
- オウンドメディアはコンバージョン獲得型とメディア型に大きく分かれる。
- コンバージョン獲得型の中にもさまざまなタイプがあり、ここでは8種類に分類して紹介。
- 他社のオウンドメディア調査にあたっては、事前に分析視点を整理しておくと効果的